CTOの挑戦・後編 強い組織の構築へ――連携は国境を超えて
10年以上におよぶ長き歴史を背負ったシステムのフルリプレース。
それが、山田がレアジョブで最初に取り組むこととなった挑戦だった。
エンジニア達を統べるミッションとして掲げたTechnology for learners。
まずは、その軸のもとに考え、行動できる人材を着実に増やしていった。
同時に、本質的な課題でもあるシステムの再構築も行わなければならない。
レアジョブのサービスには、日本にいる受講者側とフィリピンにいる講師側の両側面が必要となる。
相互依存していると、互いにとって適した改善や対応が難しいという課題があった。
そこで、2018年夏、「レアジョブ英会話」のサービスにかかわるインフラをAmazon Web Service(AWS)に移行した。
山田を除き、主要メンバーにとってAWSはほぼ未経験。
しかも、「レアジョブ英会話」のインフラは、サービス運営に直結する根幹部分である。失敗は許されない挑戦だった。
将来的な開発のしやすさコスト管理、技術開発の幅を広げる可能性を考えればこそ、大きな価値あるチャレンジにはちがいなかった。
ベースとなるサーバーは共有し、その上にあるプラットフォームは日本とフィリピンで共同開発する。
そして、さらにその上にあるアプリケーションは、日本とフィリピンでそれぞれ独立した状態を保つ。
根っこを共有しながらも、受講者や講師に近い部分は切り離していくことによって、それぞれにベストな開発が可能になるのだ。
日本とフィリピンの両国にとってより良い状態を実現するには、足並みを揃え、真の連携を育みながら前進していく必要がある。
山田自身にとっても未経験となる2カ国並行の連携、融合を図っていかねばならなかった。
まずは、レアジョブフィリピンとの距離を縮めることから始めた。
組織の垣根を越えた連携、融合は結果的に目指すことであり、最初の一手にはなり得ない。
山田はレアジョブフィリピンの技術部門のマネージャーと1on1を重ね、横串での連携を実現する土壌を築いていった。
たとえば、日本側の情報が適切に伝わらなければ、フィリピン側の戦略に後から修正が必要になることがある。どちらかが負担を強いられることなく、効率的な連携を実現するためにも、大切なのは対話を重ねること。
そうして、情報レベルの差を埋め、意識の面での距離を縮めていった。
また、フィリピンはジョブ型雇用の文化。そもそも日本とは働き方も価値観も異なる。
若いスタッフが多いこともあって、必要なサポートは手厚く行いながら、一体感を持って連携できる風土と仕組みを構築していった。
今や、個々のレイヤーでも、国境を越えた結びつきが強まっている。
マネージャークラスのスタッフは、しっかりと情報共有しながら、戦略レベルで目線と足並みを揃えていく。
「レアジョブ英会話」のレッスンを行う独自システム「レッスンルーム」の開発は、受講者と講師側の両面をカバーしていくために、日本とフィリピン共同プロジェクトが組まれている。
プラットフォームについても完全共同開発。日本のチームリーダーが、国境をまたいだチーム運営を担う。
ちなみに、サービスにかかわるシステムのフルリプレースに限らず、社内運用のシステムも大掛かりな移行が進んでいる。こちらも、日本とフィリピンが連携しながら行うクロスボーダープロジェクトとして進行形だ。
組織マネジメントの点で言えば、2020年4月に独立組織だったEdTech Labを技術本部に取り込んだ。
EdTech Labを一体化することで、R&Dからサービスにつながる技術の開発・運用までをワンストップで結びつけられる。
技術的な可能性から、サービスやプロダクトにイノベーションを起こしていけるようになり、Technology for learnersのスタンスを組織的にも強化するという姿勢の表れでもあった。
人的リソースの確保とスキルのレベルアップ、システムそのものの移行、そしてフィリピンとの連携強化。
がっちりと足場を組むようにして、山田はフルリプレースに向けた陣頭指揮を執ってきた。
無論、完遂まではまだ途上、挑戦の道半ばにはちがいない。
それでも、山田が見つめる先にゴールはある。ともに進んでいく仲間も揃ってきた。
変化を成長の好機として長く働いているスタッフと、変化に挑戦を求めてやってきた新しいスタッフがうまく組み合わさり、組織としても確実に強くなった。
挑戦を達成し、また新たな挑戦を見据える日は、きっと、そう遠くない。
前編はこちらから。
※役職、部署名などは2021年3月時点