資格の会社が、英語の会社に仲間入り? 3社トップが語るグループジョインまでの挑戦と決意
左:レアジョブ代表取締役社長 中村 岳
中央:資格スクエア代表取締役社長 佐藤 郁夫
右:サイトビジット 代表取締役 鬼頭 政人
2021年12月、オンライン専業の資格試験対策事業「資格スクエア」を展開する株式会社資格スクエアが設立した。もともとは電子契約システム事業を展開するサイトビジット社の創業サービス。これからは、主に英語関連サービスを展開するレアジョブグループとして歩んでいく。
今回のグループジョインの背景やそこに込められた経営者の挑戦と決意を、3社のトップに語ってもらった。
人が「学びたい」意欲を成果に変える
佐藤
:「資格スクエア」はオンライン専業として、通学型と比べて試験対策に要するコストを大幅に下げるという強みとともにサービス提供を始めました。2013年のサイトビジット社創業より、受講者は着実に増加しています。
鬼頭
:近年は、カリキュラムの充実やシステムの利便性向上に注力することで、学習継続のハードルを下げるという部分にシフトしてきましたね。
佐藤
:そうですね。ただ、受講者の皆さんが「試験合格」という最たる成果にたどりつくサポートをするという本質は、ずっと変わっていません。それは、運営企業とは別次元で「資格スクエア」というサービスが提供する価値と言えます。
今回、レアジョブグループにジョインするにあたり、改めてコアバリューとミッションを考えました。我々が果たすべきは、資格試験に挑戦する方々が効率的な学習をしっかりと継続し、合格という成果を勝ち取るためのサポートをすること。このコアバリューを実現していくためのミッションとして〈人の「学びたい」意欲を成果に変える〉と掲げました。
中村
:成果は、レアジョブの各事業でも打ち出しているキーワードですね。
佐藤
:そうなんです。たとえば、レアジョブグループで展開している英語スピーキングテスト「PROGOS®」は、CEFRという国際基準に基づき、自分の英語スピーキング力を客観的に定量化・可視化してくれます。その結果、成長を実感したり弱点を把握したりしながら効率的な英語学習を続けられ、「英語を話せるようになる」という“成果”にたどりつく。この世界観は、グループの一員として当社のミッションを考えるヒントにもなりました。
中村
:「資格スクエア」のコアバリューにレアジョブグループの世界観を掛け合わせた、という感じですね。
佐藤
:我々の進むべき方向性や磨いていきたい価値が、グループジョインによって一層クリアに定められたと思っています。
“まじめな経営者たち”の出会いから始まった
中村
:鬼頭さんと初めてお会いしたのは2016年頃でしたね。出身校も同じだし、EdTech関連イベントでもお会いしたり、ランチに行ったり。
鬼頭
:私は、Skypeを使った新しい英会話サービスを展開する会社として、レアジョブのことはもともと知っていたんです。英語だけじゃなく、資格試験もいずれオンラインになっていくだろう…と感じ、いわば「資格スクエア」創業のヒントをもらったサービスでもありました。
ただ、出身校の先輩とは存じ上げていなかったんですよ。実際にお会いしてみても、気取らないフラットな方だなぁという印象でした。
中村
:私からすると、鬼頭さんはすごくしっかりした人だな、と。人柄を見ても、会社や事業を見ても同じように感じましたね。
鬼頭
:ありがたいお言葉ですね。
でも、最初に「資格スクエア」のグループジョインの話をいただいた時は、「マジで?」と驚きましたね…!そのうえで「なるほど…そういう可能性もあるのか」と感じたのを覚えています。
佐藤
:確かに、freeeグループにジョインしたあとも、「資格スクエア」事業の展開可能性としてどんなシナリオがあるか、検討していましたからね。サービスをより良くしていくためのベストを考えていこう、と。
中村
:レアジョブグループには「教育」や「人のスキルを伸ばす」というキーワードがあって、だからこそ“レアジョブ”なんです。英語関連事業からスタートしたけれど、別に英語だけの会社じゃない。さらに拡大成長していくには、必ず新しい分野に進出していかねばならないと以前から考えていました。その手段として異業種の企業やサービスにも広くアンテナを張っていたんですが、サイトビジット社がfreeeグループにジョインするというニュースを知った瞬間に「これは、チャンスじゃないか?」と感じたんです。それで、ニュースの発表翌日、freeeの佐々木さんに私からすぐさま連絡を取りました。
なぜ、レアジョブグループだったのか?
飛躍の可能性と覚悟の決意
鬼頭
:サイトビジット社のミッションは「ともに成長し続け、未来をつくる」です。事業を発展させて未来をつくりたい、働くスタッフも成長して幸せになってほしい、という想いを込めています。
実は今回のジョインの話が出た時、私には「あ、うまくいきそう」という直感が走ったんです。
中村
:どの辺がポイントだったんでしょう?
鬼頭
:まずは、明確なシナジーが見込めたことですね。似て非なるというか、同じ教育ドメインでも少しずつ異なっているのが良いと思いました。また、中村さんの存在も大きかったです。会社や組織の雰囲気には、創業者や経営者自身が反映されるもの。その点で、レアジョブは中村さんがまじめだからまじめな会社だろうし、事業運営を見てもそれは同様でした。
ほかでもないレアジョブグループであれば、「資格スクエア」の事業はもっと伸びる、スタッフも幸せになれる。そう明確に思えたんです。
中村
:うれしいお言葉ですね。
佐藤
:鬼頭さんの言葉通りで、事業領域が近すぎると衝突が起こりやすくなります。一方で、あまりにもかけ離れすぎていると、事業でシナジーを生むのは難しくなる。レアジョブなら、互いの得意な部分・持っていない部分を組み合わせることで、可能性が大きく広がると感じました。
鬼頭
:ただ、これはあくまでもシナリオの一つという位置づけで、決定までは大変なこともありました。個人的には、佐藤さんに新会社のトップ就任を打診した際に即答してもらえず、「考えさせてほしい」と言われた時がとにかく不安で…(笑)
佐藤
:私は、厳しい時期にも「資格スクエア」という事業の価値を信じ、踏ん張って支えてくれたメンバーを、何としても幸せにしたいと思っていました。レアジョブグループへのジョインは最も望ましいシナリオではあったものの、まだ実現するかはわからない、という時だったんです。
トップとなるからにはより一層顧客にとって価値のある事業を作りたい、その上で必ずメンバーを幸せにしたいし、その責任を持ちたいとの想いに揺らぎはなかったです。仮にどんなシナリオになるにせよ、他の誰が自分以上にその想いを実現できるだろうか。それだけの覚悟を持った人が現れるだろうか…と思うと「だったら、自分がやるしかない」と、覚悟が決まりました。
中村
:受け入れ側として、新会社の経営体制の構築は最重要事項です。時期的に佐藤さんとのやり取りはオンラインから始まりましたが、事業成長の可能性はもちろんのこと、熱意や人柄、ビジョンを語る姿から「佐藤さんなら任せられる」と実感できました。
働くスタッフの幸せと安心を第一に
中村
:今回のM&Aはレアジョブにとってかなり大規模なもので、チャレンジングな決断や動きを求められました。鬼頭さん佐藤さんが「働く人の幸せ」とおっしゃっていましたが、やはり特に心を砕いたのは、スタッフを受け入れる準備です。
佐藤
:どう説明すればきちんと理解してもらえるだろう…と、事前にかなり相談しましたね。
中村
:本当は、グループジョインの対外発表後すぐにでも「資格スクエア」の皆さんに会いに行きたかったんです。重大な話だからこそ不安も募るでしょうし、少しでも安心してもらうために。実際には、当日はオンラインで説明し、翌営業日に対面で全員と面談を行いました。
佐藤
:非常にありがたかったです。この新たな船出を前向きに受け止めてリスタートしてほしかったですし、単に情報を伝えるだけだと、不必要な不安がふくらんでしまいやすいので。レアジョブグループのトップが自ら我々をしっかり見つめてくれていると、スタッフも実感できたはずです。
中村
:また、新会社の専任として執行役員を配置できたのも大きかったですね。
佐藤
:心強かったです。会社設立前からこちらのオフィスに来ていただき、デスクを並べてコミュニケーションできました。そういった温度感の高さ、距離感の近さが、新天地へ移る当社のスタッフにとって安心感を高めてくれる一助になったと思っています。
ちなみに、幸いなことに当社のスタッフはレアジョブグループへのジョインに対し、教育事業へのシンパシーや期待の方が大きかったようでした。全員が想いを一つに、新たな歩みを踏み出せています。
ここから始まっていく
新生「資格スクエア」の新しい成長
佐藤
:今は、スタート地点に立った、という想いです。新しいミッションを掲げ、レアジョブグループの一員として「資格スクエア」というサービスをより一層伸ばしていきます。
中村
:とても期待しています。「資格スクエア」の強みを磨き上げていくなかで、レアジョブのノウハウや経験を活かせる部分があると思いますし、逆に「資格スクエア」でつくりあげたものを横展開していくこともできるでしょう。その結果、レアジョブグループとして“学び”の領域での展開を拡大し、成長していく未来を描いていきましょう。
鬼頭
:お二人のお話を伺い、とてもわくわくしています。創業者としては、これから「資格スクエア」というサービスがどんどん新しい成長を遂げ、「資格スクエア」から創業者の影が消えるくらいに自立して成長してほしいですね。
また、レアジョブグループとしても、今回のジョインが一層の成長の転換点になったと言われるような未来を楽しみにしています。